← コラム一覧へ COLUMN

外来魚はリリース禁止?外来生物法と釣り人が知るべき法的・現実的な処理方法

執筆: ゆーや(Boss Angler's 運営者)・公開日 2026年6月13日・約 3,800 字
「ブラックバスはリリース禁止」と聞いたことがある釣り人は多いと思う。でも、どの法律で禁止されているのか具体的に何が違法で何が合法か都道府県によって違うのか、正確に答えられる人は意外と少ない。この記事では、外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)の条文を引用しながら、釣り人が現場で取るべき行動を整理する。※本記事は法的解説の参考情報であり、最終的な判断は最新の公式情報をご自身で確認してください。

外来生物法の基本

正式名称は 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(2004 年成立、2005 年施行)。環境省が所管している。

この法律で「特定外来生物」に指定された生物については、以下の行為が原則禁止される。

  • 飼育、栽培、保管、運搬
  • 輸入
  • 野外への放逐(放流・遺棄)
  • 譲渡、販売、購入

釣り人にとって重要なのは 「運搬」と「放逐」の禁止。違反すると、個人の場合 3 年以下の懲役または 300 万円以下の罰金、法人の場合 1 億円以下の罰金という重い罰則がある(同法 32 条等)。

⚠️ 「リリース禁止」というのは正確には「放逐の禁止」のこと。釣った場所と違う場所に放しても違法、その場で放しても違法。「自然に返してあげよう」という善意でも犯罪になり得る。

釣りで遭遇する「特定外来生物」の魚

現在、特定外来生物に指定されている主な魚類は以下の通り(環境省「特定外来生物一覧」より)。

和名学名主な生息域
オオクチバス(ラージマウスバス)Micropterus salmoides全国の湖沼・河川
コクチバス(スモールマウスバス)Micropterus dolomieu湖沼・冷たい河川
フロリダバスMicropterus floridanus関東以南の一部
ブルーギルLepomis macrochirus全国の湖沼
チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)Ictalurus punctatus霞ヶ浦・利根川水系等
ガー類全種Lepisosteidae 全種放流個体が時折確認
カダヤシGambusia affinis関東以南の止水
ストライプドバスMorone saxatilis一部水域で記録
ナイルパーチLates niloticus輸入禁止

この一覧は 2024 年時点の指定状況。新たな種が追加されることもあるため、釣行前に環境省公式サイトで最新版の確認を推奨する。

誤解されやすい魚

カムルチー(ライギョ)は、実は外来生物法の「特定外来生物」には現時点で指定されていない。生態系被害防止外来種リスト(環境省・農林水産省)には載っているが、これは「注意喚起のリスト」であり、法的な運搬・放逐の禁止は適用されない

ただし、ライギョが在来生態系に与える影響は指摘されており、釣り人としては持ち帰って消費する選択を取る人が多い。法律で禁止されていなくても、生態系保全の観点からは「逃さない方が望ましい」というのがコンセンサスだ。

💡 法的な「特定外来生物」かどうかと、生態系への影響は別問題。法的にOKでも生態系上は望ましくない種がある(ニジマス、コイの一部品種など)。

釣ったらどうすればいいのか — 合法的な選択肢

特定外来生物を釣ったら、以下のいずれかを選ぶ必要がある。

① その場で締めて持ち帰る(推奨)

最も明確に合法なのは、釣り上げた場所で魚を締めて死亡させ、生きていない状態で持ち帰ること。死んだ個体の運搬は法的に禁止されていない(生きたままの運搬が禁止対象)。

具体的な手順:

  1. 釣り上げたらすぐに魚を握って、ナイフでエラ蓋から脳を貫通させる(脳締め)
  2. または、エラから心臓近くの太い血管を切る(血抜き)
  3. 動かなくなったことを確認
  4. クーラーボックスに入れて持ち帰る

持ち帰った後は、調理して食べるか、廃棄処分する。

② その場で締めて廃棄する

食べる気がない、または持ち帰る手段がない場合は、その場で締めて廃棄する選択もある。ただし、釣り場のゴミ箱に入れる・道端に捨てるのは、廃棄物処理法・軽犯罪法に抵触する可能性があるので注意。

実務的には、釣り場から離れた場所で土に埋める、家のゴミとして処分するのが現実的。

③ ③(不可)リリース

生きた状態でその場に逃がす行為は、外来生物法違反になる。「キャッチ&リリース」は、対象が特定外来生物の場合は犯罪行為だ。

❌ 「殺すのはかわいそうだから逃がす」は、外来生物法に直接違反する。釣り人として一番やってはいけない行動。

都道府県条例による追加規制

外来生物法とは別に、都道府県条例で独自に規制している魚種がある。代表例:

  • 滋賀県: 「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」で、外来魚のリリースを明確に禁止。釣った外来魚は回収ボックスに入れることを義務化している。
  • 埼玉県: 「埼玉県生態系保護条例」で、特定外来生物以外も含め一部の外来魚を規制対象としている。
  • 新潟県: 「新潟県内水面漁業調整規則」で、コクチバス等のリリースを禁止。
  • 秋田県: 「秋田県内水面漁場管理委員会指示」でブラックバスのリリースを禁止。

釣行先の都道府県によっては、外来生物法より厳しい規制があることを覚えておく必要がある。「特定外来生物」に指定されていない魚種でも、都道府県条例で禁止されているケースがある点に注意。

持ち帰って食べる場合の調理ガイド

外来魚は食用として優秀な種が多い。アメリカでは伝統的な食材として親しまれているし、日本でも適切に処理すれば美味しく食べられる。

ブラックバス

白身淡白で癖が少ない。皮の臭みを除くため、三枚におろして皮を引くのが基本。フライ、ムニエル、唐揚げ、塩焼きが定番。生食は内水面魚由来の寄生虫リスクがあるため避ける。

ブルーギル

小ぶりだが身質は良い。背骨ごと唐揚げにすると骨が気にならず丸ごと食べられる。アメリカ料理ではフィッシュサンドの具材として人気。

アメリカナマズ

アメリカでは「キャットフィッシュ」として広く食用。白身でクセが少なく、フライにすると非常に美味しい。ただし、ナマズ類は脂分が多めなので、加熱料理を中心に。

ライギョ(特定外来生物ではないが)

白身が美味で、中国料理・東南アジア料理で重宝される高級魚。ただし、顎口虫(がっこうちゅう)という人体寄生虫のリスクがあるため、絶対に生食しない。中心温度 75℃ 以上で 1 分以上の加熱が必須。

🍳 内水面魚(淡水魚)全般に共通: 生食は寄生虫リスクが高い。必ず加熱料理にすること。海水魚の刺身感覚で扱わない。

違反するとどうなるか

外来生物法違反の罰則は前述の通り、個人で 3 年以下の懲役または 300 万円以下の罰金。実際の検挙事例も増えており、軽い気持ちで「ちょっとくらいいいだろう」と思ってリリースすると、環境省や警察に通報されて立件されるケースがある。

釣り場で動画を撮ってリリース動画を SNS にアップする行為は、特に通報されやすい。「証拠が残る」状態でリリースを公表することは、自分から告白するのと同じ。違反は確実に避ける。

釣り人として大切なこと

外来生物法は「外来種を悪者にする」法律ではなく、「在来生態系を守るための法律」だ。釣り人は釣り場の自然環境に依存している立場である以上、生態系保全には積極的に協力する立場でありたい。

具体的には:

  • 特定外来生物は逃がさず、責任を持って処分する
  • 釣った場所と違う場所には魚を運ばない(在来種でも生態系撹乱の原因になる)
  • 生簀やバケツの水を別の水域に流さない(卵や寄生虫の移動につながる)
  • 釣り場のルール・地域条例を釣行前に確認する
  • 外来魚を釣る楽しさと、生態系の責任を両立させる

「釣りたい魚を釣る」自由と、「自然を守る」責任は、釣り人が同時に背負うべきものだ。法律を守った上で、釣りを長く楽しめる環境を維持していきたい。

参考情報

  • 環境省「特定外来生物一覧」(最新版を必ず確認)
  • 環境省「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(条文)
  • 農林水産省「生態系被害防止外来種リスト」
  • 各都道府県の内水面漁業調整規則・関連条例
  • 厚生労働省「食品衛生・寄生虫情報」

※本記事は 2026 年 6 月時点の情報に基づき、釣り人の参考情報として執筆したものです。法令の改正・指定種の追加等により、内容は変更される可能性があります。実際の釣行・調理にあたっては、最新の公式情報をご自身で確認してください。

ゆーや(Boss Angler's 運営者)。本サイトの設計・実装・運用を個人で行っています。外来種の取り扱いは釣り人として迷う場面が多いテーマなので、法律と実務の両面から整理しました。記事の修正・情報追加のご提案は 運営者ページ までお願いします。

← コラム一覧へ戻る